武術系の稽古はとにかく要求が多いものですが、刀禅にも様々な要求があります。
原理は非常にシンプルですが、立ち方、姿勢、歩き方、刀の持ち方構え方、力の流し方等、精緻さを求める要求は多岐に渡ります。初心者のうちはできなくて当たり前ですが、知識として頭に入れ、体を動かしながら要求に従おうとすると段々と身体に染み渡り深化していきます。
さて守らなければならない要求群と並んで重要なのが「十禁習之事」です。ざっくり説明すると「やってはいけない10の決まり事」となります。稽古中はこの10の項目に抵触しないように心がけます。
「十禁習之事」は柳生兵庫助利厳が遺した「始終不捨書」に収められています。
この10の項目は新陰流の刀身一致と合致しない身の癖をまとめた禁戒であり、同時に普段の稽古で気をつけなければならないことを表わしています。技を出す時、道具を扱う時の反発動作、地面を蹴る反動を使うといった運動、手首のスナップなども使わないように気をつけます。
刀禅では形意拳など新陰流由来ではない技や稽古法もありますが、共通原理のひとつとして強く意識しなければなりません。以下非常に簡単な紹介です。
十禁習之事
第一 面を引く事
顔を引いたり退け逸らしたりしてはいけない。
第二 身と手の別る事
反発反動動作で技を出してはいけない。
第三 胸反れば手太刀展びざる事
胸を張ったり反らせてはいけない。
第四 胸に肱の付く事
胸に肘をつけてはならない。
第五 腰の折れ踞(すわ)る事
腰は良い形で踞(すわ)らなければならないが 、折れ曲がってはいけない。
第六 膝の折れ踞(すわ)る事
膝を折れ曲がらせてはいけない。
第七 前へ及び懸る事
重心が前がかりになってはいけない。
第八 手の下る事
手を低く構えてはいけない 。
第九 両足一度に踞る事
両足が揃う、開くなどで同着してはならない。
第十 拳にて太刀を使ふ事
小手先、スナップで太刀を扱ってはならない。
今回の紹介は非常にざっくりとしたものです。十禁習の詳細やその他の教えを勉強されたい方は以下の書籍を読まれることをお勧めします。「始終不捨書」の全文および解説が収められています。 また「禁」があるなら「好」があるのかということになりますが、この「始終不捨書」には「十好習之事」も収められています。